すがお

オンナノコならば二重、と惚れた男に言われたのは二年以上も前、
激しく抵抗しながらも、少しでも、少しでも、と造り二重なんぞし始めた。
まぁだからといって気付く男じゃなかった。分かっていた。
で、もう止めることが出来なくなった。
怖かった。
化粧を落とすのも嫌だった。
化粧が分からない男って、そのくせすっぴんになったときに「酷くなった」だけは感じるもんだ。
怖かった。
お風呂上がりにも二重を造って肌色を塗りたくった。
怖かった。
怖かった。
 
今は、そこまで怖くない。
もともと一重は嫌いじゃない。私の外見は私の性格に沿う形をしているのだと知っている。
素顔のままで笑うのが好きだ。
肌が汚いのはコンプレックス、だけど手入れをするのは気持ちいいし。
見た目の安心感と清潔感も大事な職業だから、仕事中は相変わらず造り二重をしている。
休みの日はあまりしない。
もしまた誰かを好きになれたら、どっちの自分も同じように見せられたらいい。
 
少し自分を許せるようになった。
なんでだろう?
 
それは多分、現在をしっかりと受け入れてもらえたことも大きい。
男友達の私を肯定してくれる言葉も大きい。
きっと、フラれてからも助け続けてくれている好きな人の存在も大きい。
人は愛を食べて育つ。
それなら私はようやく育ちはじめた。
 
私は私をちょっと好きになりはじめた。