色は匂えど散りぬ。

いつだつて状況は崖つぷち、
ろくなことはございません。
はい、はい、と従順でいてさえ
煮えきらない態度、
欲しい答えが返つたこともございません。

平均的な立ち位置に焦がれ焦がれの
とある女、とある場所、とある夜――
稚拙な痴態
流暢な隆起
濡れた浴室の壁に寄せる頬

ルウプに相次ぐルウプ、のやうな、
をちこちの狂つたこの密室、
わななく四肢さえ演技とお分かりでしたか。
感じ入つた色の睦言も、
予定調和を楽しめる内に終演と致しませう。


「謀つて欲しいのは、そんなものではないのです。」


憐憫にも似た恋慕と劣勢の冷静
そもそも貴方と――出逢わなければ。


…………


つまり君は建前が疎ましいのだ。
ねぶるような劣情、改め熱情、
宥めすかしても抱える程の膨張だとか
礼賛に値しないもの――つまり建前を要する本能、を咀嚼しながら呪う。

無益な茶番劇が真髄だとして
憂くも、浮くも、君次第でしかないと云ふのに

(いみじくも君の態度は適切ではあつたのだ。
濃艶の夜は大味に過ぎず、
逢瀬を完遂するには嬌声が足りなかつたのだから。)
(――繰り返しの大儀)(媚態)
(――やんぬるかな、その大義)(情交)

まみえても育まれないと知つていながら
健気な、君 (唾棄すべき情婦)


振り乱す長い髪に表情を隠して
声なく願つたところで届き得ないよ。
悦楽と戯れる夜の共犯者――この、夜という線引きの重要さが解るだらうか。

貞淑を捨てた君を、僕は、忌む。

愛だの恋だの、は、触れずに慈しむべきなのだから。」


…………


さて、斯様に女と男の物語があるとして、
窮屈な穴に身を投じるが如しこそ生であり、
赦さざるは赦されざることと知ること、と知るのが人生と云ふ。――とか、

命中したとて十月十日の悠長なナマモノが、何を宣いますやら。

「実も花もなく散つた幾千幾億の同志、
しからば成すことより果たすこと大事よ!」

永世の無念晴らさとばかり
ひねもす侵入、侵略、して奥地覗かず撤退――兵士のやうだわ、ヒト科オスの真髄。
もはや本能を履き違えているのかしらぬ。
生産性の浪費はかくも容易く
すべて生も死もひとつ穴の中――広くて深い、ヒト科メスの深淵。などと。

ン……、感じ入つたやうな声もどこか虚ろに響いて、あかよろし