梨木香歩の「裏庭」
サン=テグジュペリ(訳:河野万里子)の「星の王子さま
小野不由美の「華胥の幽夢」から「華胥」
 
新しい書物を開ける活力が今はないとはいえ、
今日、選び手に取ったこの三冊だけで、ああ自分の悩みを思い知れるというもの。
 
 
 
「真の癒しは鋭い痛みを伴うものだ。さほどに簡便に心地よいはずがない。傷は生きておる。それ自体が自己保存の本能をもっておる。大変な知恵者じゃ。真の癒しなぞ望んでおらぬ。ただ同じ傷の匂いをかぎわけて、集いあい、その温床を増殖させて、自分に心地よい環境を整えていくのだ。」
「癒しという言葉は、傷を持つ人間には麻薬のようなものだ。――。」
 
「そこで何をしているの?」
「飲んでるんだ。」
「どうして飲んでるの?」
「忘れるため。」
「忘れるって、なにを?」
「恥じているのを忘れるため。」
「なにを恥じているの?」
「飲むことを恥じている!」
 
「――責難は成事にあらず」
 
 
誰かの似た傷を舐めるのは心地好いけれど、私は私の傷を治す、よ。
自分を得るために律するよ。
そして成すべきことこそを考える……考えて……事実、行う。
 
ああ、多分、そんなことだ。